スラムダンクを全く知らないが映画THE FIRST SLAM DUNKを見に行った

 

タイトルの通りである。
めちゃくちゃ映画の話をするので知りたくない人は読まないことをお勧めする。

スラムダンク、とんでもない人気がある漫画であるということは知っていたが、漫画自体はネットでよく見るコラ画像Twitterの画像リプライ(大体クソリプ)でしか接することがなく読む機会もないため読んでいなかった。
けれども、スラムダンクの話をすると目を輝かせる人やいつも話さない人が饒舌になったりするのを見るとスゴイ漫画なんだなあと思うことはよくあった。
スラムダンク自体はよく知らないけれど、スラムダンクの読者を通してその熱い雰囲気のようなものをずっと感じていた。
他人に勧められたこともあり、見に行くことにし、見て感想を書き留めておくかあと思ったのでこれを書いている。


映画を見た後にスラムダンクの漫画を買っていろいろ理解したり調べものをしたりして書きたいことは沢山あるが話がとっ散らかりそうなので、時系列で書いていく。

 

【見る前】
スラムダンクのことを全然知らないので、読者が熱心というか熱いなあという感じ(前述のとおり)しかなかった。全然知らん漫画の映画見てわかるんかな?という不安もちょっとあった。
映画館には平日に行ったにもかかわらず、ほぼ満席。遅刻して後から入ってくる人もおらず期待値みたいなのがすごそうと思った。入る時にコースターみたいなものが特典として貰える。知らないデフォルメされたキャラクターが描いてあってかわいいと思った。
あと、年齢層が幅広くグレイヘアのおじさまからご高齢のご夫婦のような方々、ストリート系ファッションの若者、仕事帰りっぽいOLさんのような方などが観客だった。
皆ポップコーンを食べてたのでスラムダンクってポップコーンが出てくるのかなあと思っていた。

 

【見ている時】
最初は沖縄にいる家族のお話から始まる。父親を早くに亡くして兄弟でバスケットボールをやっているが、兄も海の事故で亡くなってしまうという悲しい始まりだった。
スラムダンクってこんな悲しくて重い話なんか…と思ってしまったが開始早々に決めつけるのはよくないなあと思って見ていた。
そうこうしているとめちゃくちゃにカッコいいドラムと共に動いているキャラクターの輪郭をなぞるようにしてキャラクターが描き出されどんどん増えていく。誰も知らんけどカッコいい。何よりドラムがめちゃくちゃに良い、カッコいい。

映画見た後にツイートするほど良いです。あのドラムは全人類に聞いてほしい。
メンバーがそろって、紅白戦が始まったな~と思ったがインターハイの試合らしい。
ここでひとつ思ったのが、特徴がめちゃくちゃある人以外は見分けがつかない。
白チームの人たちは髪型が全員同じというのもあって、本当に見分けがつかない。
赤チームでは、下まつ毛長い人と腕が上がらないって言っている人の見分けが途中までつかなかった。

この映画でわたしが唯一苦労したことは、人物を見分けることであったが、だいたいの人は漫画の読者であり見分けもつくのであろうから問題にならなさそうだなと思った。
細かいところでよくわからないのは本当に悔しかったが、試合の展開も話の展開も早くそれを気にしている暇はあまりなかった。
バスケットコートの広さや強豪校のパス回しのスピード、選手の体格のよさがリアルに伝わってくるような構成で、コートの中にいる者が様々なプレッシャーと戦っていること、その上で自分の最大限のパフォーマンスを発揮することに挑戦しているということを感じ取ることができた。

この映画の主人公は宮城リョータという人で、他のチームメイトと比べれば身体が小さく、幼少期にはよくできる兄と比べられていた。何かをするときには緊張で手が震えて"心臓バクバク"となるくらいで気が強いわけでもない。
でも、緊張で震える手をポケットに隠したり、身体が小さいからこその技術をそのプライドをもってここ一番のところで発揮(ドリブルこそチビの生きる道なんだよ)して相手を出し抜いたりする。

作中で宮城の「バスケだけが生きる支えだった」という独白があるが、兄とバスケットボールをしていた楽しい思い出も兄と比べられていた、またはその兄を喪ったつらい思い出と関連しているだろうし、遠隔地への引っ越しやそこでの陰湿ないじめ、周囲からの孤立と爽やかな青年とのバスケットボールを通しての出会い、などバスケットボールはいい思い出でありつつもつらい思い出と関連しているという描写が多かった。

それでも、バスケットボールを続けてなお「バスケだけが生きる支えだった」と言えるのはどれだけ強い人間なんだ…と率直に思った。
単体で強い人間なのかもしれないが、監督の「宮城くん、ここは君の舞台ですよ」であったりカーリーヘアのお姉さんの激励、あたたかい言葉はかけないものの態度やプレーで信頼をしていると伝えるチームメイトも、バスケットボールを通じてかかわることになった人間たちがいて、その人間たちが背中を押してくれるから力を発揮することができるんだなとも思った。

宮城が喧嘩をしたり大けがをしたりと母親には迷惑をかけ続けていた、悪かった、でもありがとう、ということを試合に勝って帰ってきてから伝えることができたのも「バスケだけが生きる支えだった」からこそ、死んだ兄と話した・夢見た山王工業高校に兄のリストバンドと共に勝つことを成し遂げた後に一区切りとして、また緊張で震える手をポケットに隠しながら伝えることができたのだろうなと思った。
母親もこっそり試合を見に来ていて、バスケットボールをする宮城を見ると兄を思い出すというつらい思い出がありつつも、宮城のここ一番の強みを目の当たりにして兄とは違うということを認識したうえで穏やかな気持ちで沖縄に似ているのかは知らないが湘南の海を眺めたり、試合を録画したビデオを見ることができるようになったのだろうと考えた。


宮城家にとって、バスケットボールは兄の死を思い出させる忌むべきものであったのだが、ひたむきにバスケットボールに取り組むことによって自分は兄の代わりや代わりになりきれない存在などではなく自分であるということ、今を生きているのは自分であるということをバスケットボールに取り組む姿で納得させる宮城リョータはどう考えてもめちゃくちゃに強い人間である気がする。

ちなみにエンディング曲の歌詞に「遠い星の少年は その腕に約束の飾り」というのがあり、宮城の兄のことを言っているのだなと思ったし「まだ旅路の最中さ」と続くため、ラストに宮城がアメリカで活躍していることすらもまだ旅路の最中なんだなあ、生きている限り旅路は続くんだよなあという少しだけ壮大な感想を抱いた。

多分、漫画で見せ場だったんだろうなというところ(この音が俺をよみがえらせる、おれは今なんだよ、負けたことがあるというのは財産)は漫画を読んでいなくてもわかった。
ほかにもあるのだろうけど、演出がかなりされていたし一発で覚えられるくらいには際立たされていた。


率直に見てよかったなあという映画だった。

【見た後】
漫画を全巻買った。読み進めて現在、三井が"バスケがしたい"と泣いているところである。登場人物が分かってきて、宮城とバスケしようと言う爽やか青年は三井であると分かった。アンタら殴り合いの喧嘩してたやないか…

あと宮城がロードワークしてたら会った女性はマネージャーの彩子さんだとわかった、髪型が全く違うので映画を見ている時には誰だか分からなかった。

また、バスケットボールのルールを全然知らないのだが読み進めていればなんとなくどんなルールがあるということは把握できるので良いなと思った。

積んでみたらこれくらい

映画を見た後に「スラムダンクのことをよく知らない原作愛がない人間がこの映画を作っているらしい」「声優を総入れ替えは裏切り」という意見に接した。
仮に原作愛がなくてこれだけの映画を作れるのであれば、愛と仕事を切り離してもめちゃくちゃに仕事ができる人間であろうし、「よく知らない」が謙遜である可能性を検討すべきである、また、総入れ替えされた後の声優さんたちの演技を見てから異を唱えるべきであると思った。

漫画スラムダンクは、電子書籍版がなく紙の本で買うしかない。
ここまで一気に紙の本をまとめて買ったのも久しぶりであるということもあり、特別な体験になった。
映画を見て漫画を買うという順番でこの経験ができてかなり良かったと思った、スラムダンクを全く知らなかった私のような人間もどんどん映画を見るべきであると思う。