タイトル通りのことが最近よくあるのでまとまった文章にして残しておきたいと思った。
まず最初に、私はよく山口一郎さんのことを知らない。
何を知っているかというと平手友梨奈さんが出演しているアンリアレイジのコンセプトムービーの音楽を作った人ということだけ。
音楽作った人ってどんな人なんだろう、と思ってGoogle検索をして、
表示された画像と、サカナクションというバンドのボーカリストとギタリストを兼ねているということを知った。
最近、思い出せる限りで5回は山口一郎さんが夢に出てきた。
夢とは不思議なもので夢の中では会ったこともなくよく知らない山口一郎さんと何も気にせず話したりしているが、
起きてから山口一郎さんだと認識すると、なんで夢に出てくるんだろうと考えてみたりする。
もしかしたら夢の中で会ったのは山口一郎さんではないのかもしれない、
だけど目覚めている私はあのGoogle検索結果の画像で見た人であるとなぜか結論した。
本当に不思議なことだけれど、こういうことは気づかないだけでよくあるのかもしれない。
第一の夢 5月11日
山口一郎さんとロシアのサンクトペテルブルクに旅行に行く夢だった。
飛行機に乗ったりはせず到着したところから始まっていた気がする。
サンクトペテルブルクの街はとても美しく、女帝の支配したロシアはこれより美しかったのだろうかと考えていた。
宮殿広場を目指して歩いていると、山口一郎さんが呟くようにというか私には聞こえる程度の声で、
「服、失敗しちゃったなあ」と言っていた。
色調は暗いけれど身につけているお洋服はサンクトペテルブルクの街によく似合っているように思ったのだけれど、
特に私は何かを言うこともなかった。
でも、黙っているのは悪い気がしたからエルミタージュ美術館の猫の話と、
第二次世界大戦中にはドイツの爆撃から美術品を守るために様々工夫を凝らした学芸員の話をした。
山口一郎さんは興味があるようなないような顔をして聞いていたので、きっと他のことを言うべきだったのだと反省した。
宮殿広場への道中に、露店があったので遠目に眺めつつ歩いた。
サンクトペテルブルクの露店はどうしてか固まって店を構えていた。
気づくと山口一郎さんが「これいいね」と細工の美しい金の指輪を買って私にくれた。
お礼を言って眺めていると「中指」と言われたので中指につけた。
ここでアラーム音で目が覚めた。
第二の夢 5月26日
山口一郎さんが厨房のようなところでパスタを作ってくれていた。
フライパンを覗くときのこと生クリームが見えた、きっときのこのクリームパスタだ。
山口一郎さんはこっちを見て「ちょっと待って」とだけ言った。
座って待っているとなぜか車の中にいて、海沿いのくねくね曲がる道を山口一郎さんの運転する車で走っていた。
どうやらパスタは食べ損ねたようだ。
海は荒れていて、でも波間の岩にたくさんのアザラシとセイウチがいてジタバタ動いていた。
アザラシとセイウチって同じところに生息できるのかなと考えていた、
でもどこに生息したってアザラシとセイウチだしどうでもいいかもしれないなとも思った。
海は荒れているのになぜか美しいエメラルドグリーンで、紺色の海でないのだなあと思って空を見上げた。
海の波は明るいエメラルドグリーンなのに空はとても曇っていた。
雲はお菓子作りの途中によく見るもったりしたクリームみたいなのに灰色で変な感じがした。
私は「曇っていますね」と肯定を期待して話しかけた。すると「どうして?雲は嫌い?」と聞かれた。
雲が嫌いかなんて、考えたことがなかったし言われて初めて雲が嫌いかどうかを真剣に考えていた。
ここで目が覚めた。
第三の夢 5月28日
砂漠の中の小屋の机で私はノートパソコンで英文契約をチェックしていた。
安部公房『砂の女』に出てきそうな砂漠で、人の気配を感じるのに人影は見えなかった。
ノートパソコンのキーボードで英文契約を修正しているのだけれど、
どうしてもタイピングが自分が思うより速くなってしまい、誤字や脱字が多くなり、結果的に多く消しては直しを繰り返していた。
英文契約に独特のラテン語の意味に詰まってしまった、いつもなら分かるしすぐに書けるのに。
Inter aliaの意味がどうしても思い出せなくてイライラしそうになった。
爆撃がきそうな天候だ、そう思った時に小屋の中にいたのか現れたのかどちらか分からないが
山口一郎さんが横に立っていた。
山口一郎さんは私に「ルビコンを渡せって知ってる?」と尋ねてきた。
ルビコンは川のことだし、領土を奪うとかそういう話じゃないんじゃないと返答すると、
私のノートパソコンを奪って「ルビコンを渡せ」と打ち込んでいた。
私がさっきまで見ていた英文契約は表示されていなくて、とても躍動感のある「ルビコンを渡せ」が表示されていた。
私はなんだか本当に爆撃がきそうだとまた急に思ったので、カエサルとルビコン川について説明をした。
けれど山口一郎さんは全然聞いていなくて、ニコニコとノートパソコンを操作していた。
机の上にあったワインの瓶とDURALEXのグラスをじっと見つめて爆撃音が聞こえないか黙っていた。
ここで目が覚めた。
第四の夢 5月30日
雨がざあざあと音を立てて降っている。車が通り過ぎる音も混ざっている。
私は前職のビルの駐車場に立っていた。取材のスタンバイをしているはずなのに私にはスケジュールもなくパソコンもICレコーダーも手元になかった。
また上司に怒られる、と思って逃げたくなった。
私はこれからここに誰が来るかも知らないのに取材なんかできるわけない。
自分の履いているハイヒールが急に曲がったような感覚に襲われ、立っていられなくなる。
自分の時計も指輪も私を逃すまいとギラついているように見えてきた、もうダメだと思った。
ビルの駐車場に傘を差した山口一郎さんが入ってきたので「関係者以外立入禁止です!」と大声で注意した。
私は必死の形相で注意したのに気にせずどんどんこちらに近づいてきた。
山口一郎さんは座り込んだ私を傘に入れてくれて、傘の内側を見るように言った。
傘の内側を見ると大きな満月があり、驚いていると「空に黄色い穴が空いてるみたいでね」と説明にもなっていない説明をしてくれた。
その後、山口一郎さんは私のかけていた眼鏡を私からとって自分の頭にかけた。
私の眼鏡はブルーのvivienne westwoodのはずなのに、山口一郎さんの頭の上に載っているのはリムレスの白山眼鏡だった。
ここでアラームで目が覚めた。
第五の夢 6月2日
私は京都の近衛通りに山口一郎さんといた。
時刻は早朝だろうか、空が青と赤と白の混じり合った色をしていたから、無性に鴨川に連れて行きたくなった。
私は学生時代を京都で過ごしたのでよく夜中に鴨川のほとりに行っていたことを話した。
山口一郎さんは微笑みながら頷きながら、ときどきふふっと笑いながら聞いてくれた。
京都にいることが嬉しくて、「学生時代の恋人と川端通で初めてデートの約束したんです」
「朝の空気は私1人が占有している気分になります」などと次々聞かれてもいないことを話した。
でも自分がいま学生でないことはなんとなくわかったので、京都にいることで浮かれている自分が一気にバカらしく感じられて、
「京都は全然変わってないように見えてどんどん変わっているんです、
変わってないのは私だけなんです、みんなどんどん選択をして変わっていく、
まだ私だけここにいる」と最後は叫ぶように言葉を叩きつけたくて、吐き出した。
少しだけ我にかえって、謝ろうと言葉を探しているとゆっくりと私の方を向いて
「きっと千年前の人も同じことを思ってるよ」と言って山口一郎さんが一筋の涙を流した。
謝るより先に「千年前からある大路で千年前の人も考えたことを考えてる?ほんとう?」と
聞いてしまった。あっしまったと思ったら強烈な太陽光のような光が差してきた。
ここで目が覚めた。
夢はこうして書いてみると脈絡も何もあったものではないな、と思う。
もしかしたら夢の中に出てきた人は山口一郎さんではないのかもしれないけれど、
こうして文章にしてみると山口一郎さんであった気がしてきた。
人の認識は信頼ならないな、とこの文章の書き始めと比較してそう思う。
だいたい私は夢を見ると追いかけられているか、責められて窮地に陥っていることが多い。
でも、不思議と山口一郎さんが出てくる夢は静かで心がざわざわしない。
全然知らない、けど夢ではよく知っている山口一郎さんに感謝したくなった。